NRI 野村総合研究所
成立背景の違いや役割、
運用の違いなど、詳しく比較

「ITヘルプデスク」と
「サービスデスク」の違いを考察する

社内の IT 活用を支援するため、多くの企業が設置している IT ヘルプデスク。また、それによく似た「サービスデスク」というものもある。両者の違いを、それぞれの背景や役割、運用イメージなど様々な面で比較してみよう。

今後ますます高度化・複雑化する企業のIT環境
活用を支えるのはITヘルプデスク?サービスデスク?

ITは、現代の企業にとって事業遂行に不可欠な存在であり、従業員にとっては重要な仕事道具でもある。コロナ禍を経て日本社会でも一定の認知を得た働き方改革にも、そして新たな競争力につながると期待されるデジタルトランスフォーメーション(DX)においても、ITは必須のツールだ。そして、ITがより高度化・複雑化していくのに伴い、不具合の連絡や、様々な質問・相談を受け付ける社内のITヘルプデスクの責任と負担は、これまで以上に重くなっていく。
現状では、下図に示した調査結果のように、約2/3の企業がITヘルプデスクを設置・運営している。さらに、その中で一部の企業は「サービスデスク」も設置していることがわかる。どちらも「デスク」の名称で、ユーザーのIT活用を支える組織・体制という点も同じだが、実は似て非なる存在だ。その違いを詳しくみていこう。まずITヘルプデスクは、もともとPCのサポートなどのために設置され、後に社内のITインフラ、業務システムなどへと対象範囲を拡大してきたケースが多い。多くの場合、サポート対象によってサポート窓口(担当者)が分かれており、ユーザーは例えばPCの不具合、業務システムの操作方法など、相談内容や目的に応じてサポート窓口を選んで連絡する。ITヘルプデスク側では、それぞれの担当者が、これまで培ってきた知識や経験を元に、必要ならベンダーにエスカレーションするなどして解決に導いていく。不具合の内容やベンダー側の動きなどを勘案しつつ、問い合わせてきたユーザーに解決策や途中経過などを伝えるようにしていることも多いだろう。
サポート対象ごとに窓口を設ける体制は、それぞれの分野を熟知した担当者が豊富な知識と経験に基づき、また開発・運用など関連チームへの太いパイプなどを駆使することで、柔軟かつ丁寧な対応が期待できる。一方で、担当窓口が分かれていることから、複数システムにまたがる問題が生じたときなどは、ユーザーがたらい回しになってしまう懸念もある。担当者ごとに経験を積んでノウハウを獲得していけば、対応レベルが人により違ってしまう可能性もあるだろう。それぞれ分野ごとに活動しているため、担当者間でのナレッジの共有も難しい。また、近年急増してきたSaaSアプリケーションなどに対しては、人材不足やスキル上の課題などから担当者を割り振れず、対応できないことも考えられる。

図1

ITヘルプデスクとサービスデスクは
様々な点で違いがある、似て非なる存在

それに対しサービスデスクは、業務システムの使用方法や障害対応、ITサービスへの改善要求、リスク管理、規制要件の遵守管理など、ITサービス全体の問い合わせを一つの窓口(SinglePointofContact)で受け付ける。サービスデスクに関わる人は、システム利用者に加え、ビジネス部門や事業企画部門、システム開発者、外部ベンダーなど広範囲になる。サービスデスクの活動は、それ自体がサービスとしてマネジメントされ、対応品質などの改善を継続的に組織として取り組んでいくものである。一連のITサービスマネジメント活動を支えるための、様々な仕組みを整備していくことも求められる。
こうして見ていくと、ITヘルプデスクとサービスデスクの間には、様々な点で違いがあることがわかるだろう。次ページの表に示したように、カバー範囲、役割、プロセス、さらには担当者に求められるスキルセットまで、かなり異なった存在だ。

図2 図3

総じて見れば、サービスデスクの方がモダンな組織だと考えられる。柔軟ではあるものの属人的な対応になりがちなITヘルプデスクに対し、関係各方面と密に連携するサービスデスクは、ITヘルプデスクの業務改革を推し進める際の目標とするにも良さそうだ。また、近年の企業内IT動向、今後の方向性などを勘案した場合にも、集約された組織により多彩なITサービスを包括的にマネジメントするサービスデスクの方がより積極的に事業貢献できるといえよう。
一方で、関係者が多く業務プロセスも多岐にわたるサービスデスク導入は困難なものになりがちだ。担当者や関係各組織との間で円滑なコミュニケーションや情報共有を可能にし、権限やセキュリティなどの点にも留意した環境の整備も、大きな負担になるだろう。サービスデスク自体のサービス改善を進めるための仕組みやルール作りも、また大きな課題だ。
特定の専門分野に深い知識とノウハウを持つ既存ITヘルプデスク担当者にとっても、サービスデスクを指向することが不安に感じられるかもしれない。業務がどのように変わるのか、これまで培ってきたスキルやナレッジを生かせるのか、どのような知識を新たに習得しなければならないのか、様々な懸念が考えられる。

IT運用ベストプラクティスの集大成ITILに基づく
サービスデスクの考え方とプロセス

このように、導入には課題もあるサービスデスクであるが、先人たちの知見を集約したベストプラクティスから編み出されたITIL®(InformationTechnologyInfrastructureLibrary)によるプロセス標準化が有効である。プロセスを標準化するのは、属人化の排除やサービスレベル向上、複雑化するシステム環境への対応などを実現していこうという考えに基づいたものだ。IT全般に関するユーザー窓口として、質問やトラブルへの対応を一元的・包括的に受け付ける。
対応を標準化・一元化することは、たらい回しや属人化の弊害を避ける上で効果的だ。この形態ではマニュアルに沿った対応しかできないものと思われがちだが、過去の対応履歴をはじめ様々な情報を共有する仕組みを設けることで、組織として状況に応じた対応を可能にする。この情報共有の仕組みは、ユーザーやベンダーなど関係各方面にも適切な範囲で提供され、サービスデスクの円滑な活動、障害の迅速な解消、ユーザー満足度向上などにも役立つ。特に、開発部門と連携する問題管理プロセスや、システム変更に関わる変更/リリース管理プロセスはシステム障害の予防やセキュリティ対策、統制管理の面でも重要であり、これらを統合管理することにより、ITサービス全体の品質を向上することができる。

図4

ツールの活用もベストプラクティスの一環
実際に成果を上げている企業も多い

もし今後、ITヘルプデスクの業務改革を考えているのなら、サービスデスク向けのITIL準拠ツールを活用していくことも有効な手段だ。
既存のITヘルプデスク業務の一部に、この種のツールを上手に取り入れることで、これまで担当者が培ってきた知見を生かしつつ、より高度な活動が可能となる。ツールは、スキルやナレッジが足りない部分を補う効果もあるため、経験の浅い担当者でも的確な状況判断や対応が可能になる。一方で経験豊富な担当者も、自らの知見に加えてツールの機能を生かすことで、より迅速な対応が期待できるだろう。
例えば、野村総合研究所(以下、NRI)が提供するITIL準拠のサービスデスクツール「SenjuServiceManager」や、SaaS版の「mPLAT/SMP」では、ユーザー事例で上記のような効果を得た企業が紹介されている。全面的にITILプロセスを導入しないまでも、ITヘルプデスクの業務改善効果が得られるというのだ。ITIL準拠のツールを活用することは、目先の業務効率化だけでなく、将来的にさらなる改善を図る上でも有効だ。初めは一部のプロセスから開始し、徐々に管理プロセスや対象システムを広げていくことで、比較的容易に改善を進めることができる。
なお、ITIL準拠のサービスデスクによる業務改革は、プロセス変革にも踏み込むことが多いだけに、ツールを導入するだけで成功できるとは限らない。適用する箇所や、業種などによっても、必要とするノウハウは異なってくる。多彩な業種のユーザーを持ち、ノウハウ豊富なNRIは、その点からも相談相手に相応しいと言えるだろう。

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