ITサービスを適切なサービスレベルで運用していくためにはITサービスマネジメントの実践が欠かせない。そこではインシデント管理や変更・リリース管理、構成管理などに目が向けられがちだが、もう1つ強化しておきたいのが「ナレッジ管理」である。さまざまな部門や社外に分散し、属人化しているナレッジを集約し、誰でも活用できるようにすることで、問題解決の早期化やエンドユーザー自身での自己解決を促進し、最終的にITサービスの満足度向上につなげることができる。
サービスデスクの品質を
向上させる「ナレッジ活用」
ビジネスにてデジタルツールやITシステムの活用範囲が広まり複雑性が増す中、ITサポート品質の重要性はかつてないほど高まっている。その中心的な役割を担っているのがサービスデスク(ヘルプデスク、サポートデスク)である。もしこれが機能していなければ、問い合わせへの対応が特定の担当者に属人化するほか、対応品質のムラが生じたりIT部門内での業務が重複したりなど、さまざまな弊害が生じてしまう。問い合わせを一元的に受け付け、適切なプロセスに従って情報共有するサービスデスクの存在はITサービスマネジメントの基本ともいえる。
問い合わせ対応の品質(精度・スピード)がITサービスに対するユーザーの満足度に直結するのは疑いがないだろう。だが、その上で対応品質をさらに向上させるにはどうすればよいだろうか。そこで重要な鍵を握っているのが「ナレッジの活用」である。サービスデスクの日常業務から得られるさまざまな情報や知識、知見をデータとして蓄積し、問い合わせ内容と関連付けて検索可能な状態としておくことで、属人化しがちだった対応ノウハウを組織的なナレッジとして活用することが可能となる。
ナレッジ活用はなぜ進まないのか
ところが多くのサービスデスク・ヘルプデスクの現場を見てみると、思うようにナレッジ活用は進んでいないのが実情だ。FAQ(よくある質問と回答)といった形で、ナレッジの蓄積および活用を進めようとしているケースも多いが、それによって回答できる範囲はきわめて限定的だ。
最大の阻害要因となっているのは、ナレッジ管理の難しさである。そもそもナレッジは社内のあらゆる部門や社外の関連会社に分散して属人化している。サービスデスクのオペレーターは社内外から問い合わせを受けた際に、各アプリケーションの開発者、インフラの運用管理者、場合によっては外部ベンダーまでエスカレーションしながら回答を行っている。こうしたやりとりから得られたナレッジを1カ所に集約し、管理していかなければならないのだ。
関係者とやりとりした内容を精査し、テンプレートなどに整理した上で蓄積し、公開するというのが一般的な流れであるが、そのプロセスはしばしば煩雑なものとなる。サービスデスクのマネージャーやオペレーターは日々の問い合わせ対応に追われているため、そうした作業にまで時間を割く余裕はない。
ナレッジ活用が難しいもう1つの理由には、「ただ集めればよい」というものではないことも関係している。作成したナレッジは継続的なメンテナンスが行われなければどんどん陳腐化していき、信用度が低下してしまう。有効なナレッジがないと判断されれば誰にも検索されず、それによって新たなナレッジの追加もなされない悪循環に陥ってしまいやすいのである。
集約した情報をナレッジとして
活用するDIKWモデル
ナレッジの積極的な活用は、サービスデスクにおけるマネージャーやオペレーターに負担を与えることなく、効率よく実施できるようにすることが成功のポイントとなる。システム運用の現場には有益な情報が大量にあるが、それらにあまり手を加えることなく有効的に活用するにはデータ活用のフレームワークである「DIKWモデル」が有効である。このフレームワークを構成する要素は以下の通りだ。
■Data(データ)
システムやユーザーからの情報、対応履歴、構成管理などのデータの集まりであり、ナレッジ活用においては以下のようなタスクが挙げられる。
・集約したデータの標準化、分析指標の設定
・システム監視情報やチケット情報など、分散している各種データの収集
・データ形式の成形、無駄な情報の削除 など
■Information(情報)
集約したデータを整理し、Who、What、Where、Whenの把握を可能にする。ナレッジ活用においては以下のようなタスクが挙げられる。
・システム運用に関する各種データのある場所の特定
・問い合わせや対応履歴情報、構成情報、システム監視情報などの関係性の把握
・権限や公開範囲を考慮した情報共有基盤の構築 など
■Knowledge(知識)
情報を体系化し、各個人やチームが持っている知識や経験から導かれるHowを提供する。ナレッジ活用においては以下のようなタスクが挙げられる。
・属人的になりがちな知識や経験に基づく暗黙知を形式知として記録
・ユーザーや外部関係者にも判りやすい内容にして積極的に情報公開
・組織やシステムを越えてナレッジを活用するため、横断的な検索基盤の構築 など
■Wisdom(知恵)
情報や知識を正しく判断するWhyを提供し適切な対応に誘導する。ナレッジ活用においては以下のようなタスクが挙げられる。
・AIなどを活用し、経験値やスキルの差を埋める
・ナレッジに対する対応プロセスを示し、ナレッジの内容を深める
・公開されたナレッジの分析、継続的見直し、活用促進 など
これらのステップにより、単なる情報を知恵として昇華させ、ITサービスの品質向上に活かすことが可能になる。
ナレッジの積極活用を支援する
ITSM(ITサービスマネジメント)ツール
上記のようなDIKWモデルをベースとしたナレッジ管理プロセスを確実に実践していくためには、サービスデスクやITサービスマネジメントを支えるシステムの活用が効果的である。その観点から、野村総合研究所(NRI)のサービスデスクツール「Senju/SM」は有効なツールとなるだろう。Senju/SMは、ITIL®やISO20000(ITSMS)で求められる運用プロセスを実現するツールとして国内シェアNo.1※を誇っている。もともとNRIの運用現場から生まれた製品として、日本特有の精緻な運用にも柔軟に対応する。業務負荷を軽減させつつITサービスの品質を向上させ、システム利用者や運用管理ツールからの多様な情報に対し、迅速かつ的確に対応するサービスデスクを実現する。実際にナレッジ管理・活用をどのように実現していくのかを見ていこう。
※ITR「ITR Market View:運用管理市場2021」 サービスデスク/インシデント管理市場: ベンダー別売上金額シェア(2019~2021年度予測)、 mPLATおよびSenju Familyが対象■データを自動集約
DIKWモデルのベースになるのがData(データ)である。Senju/SMはシステム監視ツールや構成管理ツールなどと連携しデータを自動集約することができる。サービスデスクでは、何らかの問い合わせやシステムからのイベントが発生した場合、インシデント管理や問題管理などの取り組みとしてまずチケットとして対応を管理する。ナレッジ活用というと、そうした過去の履歴からチケットを件名ベースで調べたり、全文検索をかけながら類似する事例がないかを調べながら問題を対処していくことが多いだろう。その時にデータが集約できていることにより、より正確かつ迅速な対応が可能になる。
■広い範囲で情報の関係性や影響度を把握
次にInformation(情報)だが、ナレッジとしてデータを活用するには、収集し蓄積するだけでなく状況判断や対応方針の決定に生かせる形にしなければならない。Senju/SMでは、インシデント管理、問題管理、変更管理、構成管理などの各プロセスを関係するチケット同士でリンクを張ることができるため、ナレッジとして検索した場合により広い範囲で関係性や影響度を把握できる。アクセス権限や閲覧範囲も細かく設定できるため、状況に応じて有効な情報共有基盤を構築できる。
■手間をかけずにナレッジを登録
情報をナレッジとしてより積極的に活用するステップがKnowledge(知識)だが、Senju/SMではナレッジのまとめ方として過去に発生した「既知のエラー」や「FAQ」などにまとめたり、ファイルライブラリ、リンク集などの形で管理し情報を共有していくことが可能だ。通常業務で扱っている各種チケットをあまり変更せずに手間なく公開する工夫が施されている。
そもそもナレッジとしてFAQが溜まりにくい原因の1つには、対応した履歴情報をわざわざFAQとして登録するひと手間の煩わしさがある。企業によっては、サービスデスクのツールと、FAQのシステムが別々で管理されているところも多く、多忙な業務の中ではFAQとしての登録まで手が回らないということも考えられるだろう。
さらに、FAQを勝手に登録して乱立させないように、登録許可のために承認フローを設けている企業であれば、ナレッジはより溜まりにくい状態となってしまう。
それに対してSenju/SMでは、チケットを確認・記入する画面のメニューの中に、すでにワンクリックで「ナレッジ登録申請」ができるようになっている。申請後に上長などから承認され、FAQなどのナレッジとして公開できる。つまり、サービスデスク業務の中で自然にナレッジ登録を促す仕組みになっている。もちろん、ナレッジとしての登録は、承認を経ずに登録することも可能だ。自社のルールに合わせて適切な運用を行っていくとよいだろう。
社内向けナレッジと外部公開向け
ナレッジの切り替えも容易
Senju/SMがナレッジ活用を促進するもう1つの特徴として、FAQの場合、いくつかの段階に応じた公開方法がある点も挙げられる。エンドユーザーなど、Senju/SMのアカウントを持っていない全ユーザーが参照できる「オープンFAQ」として公開することもできれば、Senju/SMにログインして利用するIT部門担当者など向けに閉じた範囲で公開することもできる。
この機能は、まずは部門内部向けのナレッジとして活用しつつ、属人的に暗黙知化されている情報を付与し内容を精査してから外部向けのFAQとして公開するという段階的な移行に役立つ。ナレッジ管理の難しさの1つには、IT部門内部向けナレッジはそのままエンドユーザーが参照しても理解しにくいことにある。それがFAQの二重管理にも陥る原因にもなるが、単一のシステムで段階的に管理できるSenju/SMはそのリスクを低減できるといえるだろう。
レコメンドとナレッジワークフローにより、
適切な対応を指南
最後にWisdom(知恵)に関しては、自律型システム運用管理ツール「Senju/ASM」のレコメンド機能が有効である。この機能は、チケット内容を自動解析し関連するナレッジ情報をスコア順にレコメンドする。レコメンドされたナレッジ情報にはナレッジワークフローとして適切な対応が登録されており、指示にしたがって対応するだけでなくオペレーションの自動化も可能だ。ナレッジ情報に対応プロセスまで加えることにより、属人化からのさらなる脱却が可能になる。また、各ナレッジがどの程度役に立っているのか、どのようなキーワードが頻出しているかなども把握できるようになっており、コンテンツの陳腐化防止や活用促進もサポートする。
ここまで、ナレッジ管理の重要性やシステムの中でのあり方について触れてきた。特にITサービスマネジメントの取り組みの中では、ナレッジ管理はインシデント管理などに比べてどうしても優先順位が下がりがちであるが、正しく整備することができれば問題解決の早期化やFAQ参照によるユーザーの自己解決を促進し、ひいては問い合わせ数削減やIT部門の業務負荷解消にもつながる。ぜひ、ナレッジの登録や参照の利便性を念頭に、自社のサービスデスクのシステムや業務プロセスを見直してみてはいかがだろうか。
最新ソリューション資料を見る
ソリューション紹介資料ダウンロード ソリューション一覧へ戻るSenju Family / mPLATに関するお問い合わせ
ご購入前の製品・サービスに関するお問合せは
Senjuインフォメーションセンター までお願いします。