事業の拡大や多様化、DXへの取り組みなどにより、増大するITサービスへの要求に課題を抱える企業は少なくない。その膨大な作業負担を軽減し、人的ミスを抑制、リードタイム短縮を図るには、自由度の高いITSMツールによる自動化が効果的だ。
サービス要求の増大が多くの課題をもたらす
企業が利用している社内外の様々なシステムは、従業員や顧客、取引先などへのITサービスと定義することができる。これらのITサービスは今や、事業を支える重要な要素となっており、その品質は業績をも左右しかねないものだ。ITサービスを円滑に提供し、その品質を継続的に高めていく取り組みは、今後ますます重要となる。
そこで注目されるのが、ITサービスにまつわる業務プロセスのマネジメント手法だ。そのベストプラクティスの代表格が、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)である。ITILには、ITサービスにまつわる数々の業務プロセスや機能が定義されている。いずれも重要なものだが、事業が多様化しITサービスが複雑化するにつれ、システム利用者や開発担当者の満足度に直結する「サービス要求」への対応の重要度が増していく。
サービス要求は、例えばクラウドサービスの利用申請や、ユーザーアカウントの登録/変更/削除といった、様々な要求の管理と対応業務を指す。ITサービスが高度化していく中で、サービス要求の件数は増大し、内容も多様化していくことは容易に想像できる。対応を手作業に頼っていては、情報システム部門の作業負荷や人為的ミスの可能性も増大していくばかりだ。さらには、要求を出したユーザーが対応を待たされる場面も増えるなど、ITサービス全体の品質感を低下させる要因にもなってしまう。
様々な業務ロジックに応じた柔軟な自動化に注目
手作業による負担や人為ミス、リードタイムなどの課題を改善するには、自動化が効果的であることはいうまでもない。より多くの作業を自動化できれば、作業者や関係者の業務負荷軽減、人的ミス抑制や対応品質の均一化、そして対応のスピードアップなど、多くの効果が期待できる。しかし、サービス要求の内容は多岐に渡る。企業ごと、システムごとに違いが大きいうえに、途中で上長の承認や関連する他部署の作業が発生するような内容も多く、業務フローが複雑になりがちだ。しかもサービス要求によっては各種システムとの連携が必要になるなど、自動化が難しい領域でもあった。ITIL準拠のツールは数多く存在しているが、サービス要求の複雑な業務の流れを柔軟に自動化できるツールは少ないのが現状だ。そうした中、野村総合研究所(NRI)では、ITIL準拠サービスデスクツールとして豊富な実績を持つ「Senju/SM」、およびそのSaaS版である「mPLAT/SMP」において、新たに「業務ロジックアドオン」の提供を開始した。本機能は、業務ロジックや業務フローを柔軟に作り込むことができ、外部サービスとの連携も容易に行えるため、申請後の業務ルールに則った内容確認や作業の自動化を強力に推進する。以下、この業務ロジックアドオンについて、NRIが示す4つの活用例をみていこう。
活用例 1 定型作業の自動承認で承認者の負担軽減
サービス要求の中でも頻繁かつ複雑になりがちな業務フローの一つが、リリース作業に伴う申請・承認プロセスだ。本番リリースの際には、様々なリスクが想定されるため、その回避策として上長である責任者や、運用部署など他部署の関係者による承認を経ることが基本となる。とはいえ、責任者が一律に承認を求められると、その確認・承認の業務だけでも大きな負担となり、申請者も承認待ちで時間をロスしがちだ。
業務ロジックアドオンは、リスクの低い定型作業などの際、承認を人間でなくシステムが行うように業務フローを作り込むことができる。定型作業の自動承認を実施することで人間の判断が必要なリリースの精査に時間を割くことができる。これにより、リスク増大を抑えつつも、承認者の負担を軽減し、申請者の待ち時間を短縮させられる。
活用例 2 パブリッククラウドのユーザー作成自動化
パブリッククラウドを利用する多くの企業にとって、その運用において負荷が高い作業の一つが、ユーザーアカウントの管理だ。ほぼ全社員が利用するSaaSアプリケーションについては自動化が進んでいるものの、専ら開発チームや運用チームだけが使うIaaSやPaaSに対しては、今も手作業で行っている企業が少なくない。しかし手作業では、ユーザー設定の要求が発生するたびに、担当者がクラウドサービス上のコンソールにログインし、ユーザーIDや権限などを設定しなければならず、手間も時間もかかる。また、設定内容のミスなども懸念され、セキュリティリスクにもつながりかねない。
このような作業も、業務ロジックアドオンなら自動化が容易だ。申請され承認が済んだサービス要求に対し、ユーザーIDの作成や乱数による初期パスワード生成、結果を申請者へフィードバックするまでの一連の作業を全て自動化できる。これにより、作業負荷の軽減と作業ミス抑制、作成完了までのリードタイム短縮という、3つの大きな効果をもたらす。
活用例 3 イレギュラーな割り込みをビジネスチャットへ通知
本番環境へのリリース作業などでは、ITインフラ上の問題や利用部門の都合などにより、ワークフローの一時中断を余儀なくされる場面も考えられる。このような場合は、承認待ちの申請者を無駄に待たせるだけでなく、関係者にタイムリーに状況を伝えていくことが望ましい。とはいえ、イレギュラーな局面は自動化が困難なものだ。チーム全体にメールやメッセージで通知することは容易だが、申請中でない者や、場合によっては条件に当てはまらない者にまで届いて混乱を招く可能性もある。一方で、各申請者へ個別にメッセージや電話で通達しようとすれば、多大な手間や時間を要することになる。
業務ロジックアドオンは、Webhookでチャットツールへ投稿することができ、このようなイレギュラーな局面でも必要な相手にタイムリーな通知が可能だ。Senju/SMあるいはmPLAT/SMPの画面を見ていない申請待ち作業者でも、チャットの通知ですぐに気付くことができる。
活用例 4 申請内容に応じたテンプレートで手戻り削減
同種のサービス要求の中にも、その内容により必要な申請項目が異なるケースがある。本番リリース申請の例でいえば、新規/変更、社内向け/社外向けなど様々な種別があり、区分に応じて入力すべき内容が異なるはずだ。画一的なテンプレートでは、申請者が見落としたり間違えたりするなどの可能性が高く、入力不備で差し戻されるケースも頻発しがちだ。区分ごとにテンプレートを用意して申請者が適切なものを選択するやり方も、混乱を招きやすい。そして、どちらの方法でも、申請者には手間と時間を取らせることになる。この課題への対策としては、申請者が最初に種別や区分を選び、これに応じて適切なテンプレートを提供する、ウィザードのような仕組みが考えられる。業務ロジックアドオンでは、コンボボックスやドロップダウンリストなどの形で区分を選択させ、詳細情報のテンプレートを外部サービスからWebhookで呼び出し、入力画面に反映させるといった方法で、この仕組みを実現可能だ。このテンプレートに応じた内容を入力するだけで、申請者のミスや漏れを低減できる。また、適切なテンプレートを用意することで、申請者それぞれの入力内容を均一化し、作業者ごとの差を減らすことにもつながる。
工数が削減され、申請書の版管理も不要に
紹介した4つの活用例から分かるように、業務ロジックアドオン機能は自由にロジックを作り込むことができ、外部サービスとも連携できるため、設計の工夫次第で様々な活用が可能だ。サービス要求の申請者にも承認者にも、ひいてはITサービスの利用者全体にも、多くのメリットが期待できる。NRIの社内でも、すでにいくつかの業務で活用され、その効果が確認されているとのことだ。
また、Senju/SMやmPLAT/SMPをすでに導入しているユーザー企業は現行業務に影響なく機能追加できるため、それぞれの課題に応じた活用を検討したり、実際に活用し始めているという。例えば、以下のような例だ。
●ケースその1:
通信許可作業は、160h/週かかっていたが、既存ネットワーク定義との突き合わせなどの申請内容チェック作業を、業務ロジックアドオンで自動化したことにより、120h/週(約25%の削減、-40h/週)に抑えることができた。
●ケースその2:
業務ロジックアドオンができたことにより、複雑なExcel申請書を廃止することができた。具体的には、Excelの版管理から開放され、申請者に最新版を展開したり、古い版で申請されるのを差し戻したりすることがなくなった。また、版管理の煩雑さのせいで軽微な改善に取り組みづらかったのが、容易に申請フォームの更新ができるようになった。
●ケースその3:
Senju/SMやmPLAT/SMPに直接データが記録されることで、処理件数の集計が容易になった(Excelだと1つ1つ開いて集計したり、Excelマクロが必要だったりする)。
サービス要求に関する作業負担や人的ミス、リードタイムなどの課題を感じている企業にとって、解決の糸口になることが期待できよう。
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